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2019年1月

2019年1月31日 (木)

医師の働き方改革に伴うタスクシフティングとCE

そもそも、なぜ働き改革が必要なのか?方策を検討する議論は進んでいるが、その理由について公にはなっていないように思う。真実は不明であるが、どうやらその根幹は少子高齢化社会にあるようだ。2014年12月の12784万人をピークに人口減となった我が国は、高齢化比率の高まりも伴って、生産年齢人口が減少している。“モノ”を基準に幸福が評価できるのか?という疑問はさておき、資本主義社会が席巻する現在では国民総生産(GDP)が豊かさの指標とされるきらいがある。人間の欲望を満たすモノやサービスを、いかに多くしかも効率的に作ることができるかで、優れた国がどうかを評価され、そういう意味においては、昨今の我が国は決して良い評価どされていないであろう。

話を戻すと、人口減によって今後さらに労働力不足が懸念され、国際競争力に後れを取ることが予想される将来のために、政府が考え出した苦肉の策が女子力と壮年力、そして外国人労働者である。あの手この手で(本気でやったかどうかは置いといて…)少子化対策を講じても出生数は伸び悩み、先に述べたようなところに頼らざるを得ないところが本音であろう。事実、外国人労働者の数は日常生活でも実感として感じられ、入管法の改正は記憶に新しいところで、今後益々外国人の労働者の姿を目にする機会は増えると思われる。

そこで、働き方改革となる。戦後の高度経済成長時代には、男は仕事、女は家庭とある程度の役割分担が成立しており、極端な話仕事だけしておけば良いスタイルの男にとって、多少の長時間労働や時間外勤務に耐えうるだけの周囲のサポート体制が整っていたと考えられる。(あくまで私見ではあるが…)しかし、夫婦共働きとなるとそうはいかない。生産性向上に女子力を必要とする政府にとって、女子でも耐えうることができる労働環境を整える必要性が出てきた。さらに、語弊が無ければ怠け者と言われる外国人にとっては、24時間戦えますかなどと言う日本人の文化には耐え難いものがあるらしく、そこそこの世界標準に労働時間を合わせる必要がでてきたのだと言われている。

確かに日本の医師の労働時間は異常であると言わざるを得ない。当直ひとつとっても翌日普通に勤務している例はざらで、安全面から捉えても航空機のパイロットでは、集中力の欠如としてあり得ない話だそうだ。人の命を預かるという意味では同じなのに。厚生労働省の検討会では時間外の上限を2000時間とする案で議論されているが、この数字を日常生活に当てはめて考えると、かなりの重労働であることがわかる。そのような時代背景の大きな潮流に乗って、医師のタスクシフトが注目されているのである。従前までのチーム医療の充実とは、根本的に原点と発想が異なるのである。

さて、臨床工学技士はこの時代変化を漫然と眺めていて良いのであろうか?検査、薬剤、放射線など様々な医療専門職があるが、患者を目の前にして治療の最前線で医師の補助業務を行っている最も近い位置に居るのは臨床工学技士ではないのであろうか。集中治療室や手術室で高度複雑な医療機器の保守管理を担いつつ、医師や看護師の業務負担軽減に貢献できる立ち位置に居るのではないであろうか。在宅医療が拡大する中で通信技術を用いた遠隔医療技術を取り入れ、安定した環境を整備すると同時に、患者の一般状態も観察し医師に伝達できる能力を備えているのではないか。

ただ、「やりたい!」と宣言するだけで、実施できるほど世の中甘くない。それに相応する実力が必要であり、技術と知識さらには実績と信頼が伴わなければならない。時代の潮流に上手く乗るなら、先行して運用されつつある特定看護師制度を見習い、我々も制度設計を行って、実力と実績を積み上げる時期である。この思いは一部の人間がいくら熱くなっても屁のツッパリである。大義名分ではなく本当の意味での社会貢献と自らの存在意義の評価が得られる絶好のチャンスに来ている。これを逃すと臨床工学技士の未来は期待できない。より多くの臨床工学技士が“その気”になってくれることを強く願う。


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2019年1月15日 (火)

年頭所感2019

あけましておめでとうございます。改めて初春のお慶びを申し上げます。

国際的には北朝鮮問題に歴史的な動きがあったものの進展には至らず、挑発的な行為が差控えられているだけマシな状況と言えるのか、どんな関係でも相手が居ると両者が思い通りの見解に落ち着くのは相当な困難を要するようです。昨年末に勃発した米中貿易戦争の潮流は、世界の覇権国の争いや情報を盗む行為の抑制と言う目的だけでなく、テクノロジーの進化によるグローバリズムが過剰な進行を及ぼし、長い間積み上げてきた各国の歴史と文化、地域交流などを壊しかねない空気を感じた警戒感の現われとも言われています。欧州各国でも英国のブレグジットや独国の難民問題なども同様で、異国文化や異国思想の流入とうまく融合することが出来ない嫌悪感からこのような流れになっていると分析される論説もあります。一方、本邦では入管法が改正され今後外国人の受入れが拡大することが予想されています。この背景にはまたしても少子高齢化と人口減があり、拡大する社会保障費を補うための経済活動を支えるために、外国人の労働力に頼らざるを得ない事情があり、島国日本として育てられた独特の個性と価値観を持った国民性の転換期となる可能性があります。

また、昨年ほど実生活にテクノロジーの進化を肌で感じた年は、過去に無かったのではないでしょうか?仮想通貨流出問題に始まり、LINE-PAYやPAY-PAYなど紙幣を用いない金品のやり取りが目立ちようになりましたし、新年早々ZOZOTOWNの100名100万円プレゼントの話題は世間を驚かせました。自動化やAIという言葉を耳にしない日は少なく、珍しく高視聴率を獲得した「下町ロケット」も、日本人好みの懐かしい雰囲気を演出しつつも、内容は農業の自動化という現代のトレンドを捉えた内容となっていました。この先の未来は予測不可能ですが、間違いなく我々自身が刻んでいくものでもあります。日々を流されるままに過ごすのではなく、ある程度未来を予測してそのための準備を整える必要があります。「ボーっと生きてんじゃねぇよ!」というチコちゃんのフレーズは、昨年の流行語大賞にノミネートされました。勤勉で忠実な日本人は規則をしっかり守るまじめな国民性がある一方で、能動的に自ら規則を創り出す行動には控えめな気がします。未来を自ら積極的に創造する行動を、即ち政治への参加を僭越ながら願う次第です。

2018年は当連盟にとっても大きな前進を遂げた年になりました。5月24日に設立された「臨床工学技士の資質向上を求める議員連盟」は歴史的な出来事であり、34441195_1776677995755779_177483190 それに先立つ5月21日には自見はなこ参議院議員より、国会で初めて臨床工学技士について質問と答弁が行われました。議連設立総会の翌日より神奈川県で開催された日本臨床工学会では、初の厚生労働大臣の招請が実現しましたし、11月には厚生労働省、文部科学省、人事院を交えて、役員の国会議員の先生方と議連役員会が開かれました。臨床工学技士に関わる様々な諸問題と要望を、行政と立法を司る先生方に直接お伝えする機会が実現したことは、実に喜ばしいことです。さらに昨年後半には働き方改革に伴う医師のタスクシフト(業務移管)について、臨床工学技士の名称が多方面から散見されるようになり、日臨工でもタスクシフト委員会を創設し、性急な対応を行うとともに各団体や組織に働きかけを行いました。その成果もあって厚生労働省開催中の「医師の働き方改革に関する検討会」においても多職種連携の一員として、臨床工学技士が取り上げられるようになっています。

2013年の連盟創設から昨年までの会員数の推移を図に示します。

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連盟の会員数は日臨工会員数に比し数%台と未だに低迷しており、あらゆる策を講じて会員数の増加を試みておりますが、決め手とはならず役員一同、手詰まりを感じているところです。ある程度活動の結果が見え始めているだけに、周囲の支援が乏しいのは残念な限りです。端的に数は意思を現します。臨床工学技士の未来に対する総意がこの数であると言われて反論する術がありません。一部の人間が矢面に立って熱く訴えても、総意が付いてこなければ絶対に結果も付いてきません。

 反面、昨年は各ブロックで国会議員を招いたイベントが企画されました。また、国会議員主催のセミナーに多数の参加者を動員することができました。

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多くの方々にご支援を頂くとともに、会員の意識も少しずつ変化してきていると感じられ、我々の意欲向上のビタミン剤となっています。本年は統一地方選挙、参議院選挙が重なる12年に一度の亥年です。差し当たり年度の節目となる4月前後には、全国で総会などのイベントが開催されると思いますので、行事予定をご連絡いただきイベントの企画をご相談できればと思っています。

 連盟創設以来一貫してお伝えしていることは、30年の節目を迎え臨床工学技士も転換期を迎えているということです。生活環境や社会情勢、テクノロジーの進化など想像を超える速さで世の中が変化しています。加えて昨年末の入管法(出入国管理及び難民認定法)成立は記憶に新しいですが、グローバリズムの台頭が、強烈な勢いで我々の実生活に押し寄せています。秋には消費税の引き上げも予定されています。これら一つ一つはすべて身近な日常に変化を及ぼす政策です。臨床工学技士に目を向けると先に述べた医師の働き方改革に伴うタスクシフティングは、今年より5年計画で進められ2024年から実施の予定です。周術期管理や在宅医療など幅広く医師の業務負担軽減に、臨床工学技士がお手伝いできる可能性を秘めています。その根幹となる臨床工学技士の教育改革(コアカリキュラム)の改変は来年度に予定されています。これには他業界より遅れを取っていると言われる、サイバーセキュリティー対策について組み込まれる可能性があります。

 2019年は臨床工学技士リニューアル元年。これらすべて総意で臨めばそのように変化しますし、そうでなければ現状維持のまま、いや現状維持は衰退を意味します。「打ち上げ花火で終わらせない。」議連創設の後に掲げた言葉をもう一度思い返し、成長に向けたベクトルを加速させていきたいと考えておりますので、何卒、総意を持ってご支援とご協力をお願い申し上げます。最後に皆様にとって、今年1年が過去最高に有意義な1年となりますよう心より祈念しております。

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